伝統と格式高い白亜のホテルは100周年を目前に
幸運なお客様を迎える事なく、一夜にしてその幕を閉じました
これは開かなかった幕のずっと先、遠い遠い話

千夜一夜、不思議なお話のはじまりはじまり


✧ Side Gaspard ✧


 街中が赤や緑に着飾り暖かくきらびやかなクリスマスムードで賑わう中、雪を重々しく乗せた常緑樹のしなる音と降り続ける雪の静かな音に包まれた緑と白の森に年齢も服装もばらばらの見ず知らずの男女が10人。
 首からカメラを下げる者、ボイスレコーダーのテストをする者、SNSに己の写真と共にこれから始まるツアーについて投稿する者など様々。共通する事はお互いを知らないことと、目的地を同じにすることだけ。

 その不思議な集まりの中で淡い赤毛の男性が一人、意を決したように咳払いをするとおずおずと手を挙げ、皆の注目を集めた。

「えー……幸運なお客様、雪の降る中ツアーへのご参加ありがとうございます。ガイドとストーリーテラーを務めます、ギャスパルです……よろしくお願いします」

 ぱらぱらと疎らな拍手に苦笑を浮かべるとギャスパルは台本であろうルーズリーフをぺらりと1枚捲った。

「本日これから訪れるのは忘れられた白亜の城、ホテルカサブランカ……60年程前、突如一夜にして宿泊客、従業員の全てが姿を消し世間を賑わしたホテル。その謎の多さからミステリー好き、オカルトマニアからの人気が高く……朽ちても尚衰えぬ美しさに、廃墟好きからも聖地とされる場所です」

 一気に読み切るとギャスパルは顔を上げ、自分を軸になんとなく円卓状に並んでいるツアー参加者を軽く見回した。

「一応主催からカサブランカの管理人に許可は取ってあるんですけど、廃墟であることに変わりはないので事故や怪我には気をつけてもらって……」
「ちょっといいかい?」

 ギャスパルの言葉を遮るように手を挙げ、柔らかそうな栗毛を1本に纏め上げた女性が真新しい雪を踏みしめ前に進み出た。

「皆の囁く話だとオーナーに家族はおらず、ホテル関係者は全員消えている。話に出た管理人はここを買い取った者、であっているかな?」
「え、ああ……確かこっちの紙に……ちょっと待っててください、えっと、あなたは……」

 ギャスパルが用意していたルーズリーフを数枚めくり資料を探す手を止め、困惑したように女性に目配せをした。
 目配せを受けた女性は、ふむと納得したようにギャスパルに笑顔を返した。

「失礼、私はホームズ。レディホームズとでも呼んでくれて構わない」
「ホームズ?」

 レディホームズと名乗る女性の反対側で黙って話を聞いていた男性が思わず、といった感じで声を上げた。

「この国でホームズといったら名探偵ホームズさんの子孫で?」

 男性は薄紫の色付き眼鏡を少し下げ、値踏みするようにレディホームズを眺めた。

「シャーロックホームズは伝記、と言うのが我が家の家訓でね。大叔父も探偵として名を馳せていたから、まあ名探偵ホームズの子孫ではあるね……記者さん」
「これはこれは、握手もせずに当てられちゃ呆気なくて推理小説にもならないさ」

 記者と呼ばれた男性はおどけたように肩を竦めポケットから1枚の名刺を取り出すと、見せるよう胸の高さでひらひらとかざした。

「ジョン・ドゥ……君は名無しのオカルト記者か!オカルトやミステリーのインチキを尽く吊し上げていったジョン・ドゥに会うとは」
「目に見えるものはどんな形であれ真実、真実は伝えるべしが我が家の家訓でね」

 ジョン・ドゥと名乗る記者とレディホームズは、お互い食えない者同士剣呑な空気でにこやかに微笑んだ。

「盛り上がってるところ申し訳ないんですが……」

 その空気におっかなびっくりするように再びギャスパルがおずおずと手を挙げた。

「さっきの質問なんですけど……事件性があるから警察の捜査が一度入り、その後すぐに資産家が買い取ったらしいです」
「ホテル運営、もしくは住居として?」

 資料を読みながらギャスパルは緩く首を振って否定を示した。

「いえ……購入してから数度立ち入った事はあるみたいですけど、ホテルとしては勿論、別荘としても使ってないみたいですね」
「へえ、そんなえらく立派な建物を再利用もしないで腐らせるとは資産家さんは変わってるもんだ」
「まあ、そんなわけでして手入れもされてない廃墟で危ないこともあるでしょうから……皆さん気をつけて、自由行動までは離れずに。では、そろそろ時間なので出発しましょうか」

 ギャスパルは改めて参加者を見回すと踵を返し、まだ誰も踏みしめていないホテルまでの白い道をしゃくしゃくと音を立てて歩き出した。

「えっと、到着まで歩きながらですけどこのホテルにまつわる話をしながら向かいますね。ホテルで起きたとされている話、麓の町で語られる噂話、これらを纏めて再編したお話です」

 そう言うとギャスパルは背負っているリュックから革表紙に金の箔押しでCasablancaと書かれた本を取り出し、アーモンド型にカットされたエメラルドが飾られた表紙をゆっくりと開いた。

 雲がひしめく空から差す淡い陽の光を吸って一瞬、白い地面に緑の光がきらりと反射した。

「まずは、白亜の城と名高かったホテルカサブランカの話から。今から……ざっと60年程前のお話です」


60年前の12月23日。
今も栄える有名ホテルと肩を並べる老舗のホテルが突如、一夜にしてオーナーをはじめ従業員、宿泊客が全員姿を消し当時はセンセーショナルな一大ニュースになりました。
カップには飲みかけの紅茶が、厨房にはオーブンに入った焦げたパイが、全てがそのままに人だけが忽然と姿を消した。
今では歴史に名を馳せていますが、当時は新進気鋭の名探偵。女性敏腕記者などがこの神隠しのような事件を取り上げましたが、謎は一向に分からず……切り裂きジャック同様イギリス未解決事件として、オカルト好きの間では有名な話ですね。
そして、この事件には当時報道されなかった部分があるんです。
不思議な事にその一夜で姿を消した人間の中に、公になってはいない生存者がいたんです。

事件の起きたその日、ホテルにいた人間は跡形もなく全員消えています。
ですが、チェックインの名簿に記載された名前を辿ると、10名、無事に生存している人間が見つかりました。
そのうち数名は存在しない架空の名前。
残りの数名は実際に存在している人物。
事件当時ホテルに宿泊もしていなければ、カサブランカの名前を知らない者までいたそうです。
そして、その生存者のチェックインの日付はホテルが迎えることのなかったあくる日、12月24日。
勿論、誰かの悪戯書きと思われていたのですが……未だにこの事件を追っているファンの一人がつい最近、あることに気がつきました。
架空と言われていた人物と同姓同名の人間が数十年経った今、この国に存在している。
ホテルは未来に生まれる人物をチェックインさせていたんだ。
一般的な名前であれば同姓同名なんて五万といますし、本当かどうかはわからないですけど……。
その不思議な点も、このホテル自体の人を惹きつける魅力と相まってこのようにツアーが開催されるほどの根強い人気があるんでしょうね。

「事件ともオカルトとも言われている不思議な話ですね……次は、麓の町で囁かれる噂話をまとめたものです」

 町から歩いて1マイルと200ヤードほど離れた小高い丘の上にそのホテルは佇んでいる。
 町からの喧騒も届かぬ俗世からは切り離された様な、閑静で豪奢な美しい純白のカサブランカ。
 納品や用聞きで向かった町の人間達は一様に百合の香りに酔いしれたように帰ってきては「金を貯めていつか宿泊客として行ってみたい」と言っていた。
 そんな市井の者共とは違う上流階級に対する妬みや憧れからだろうか、ぽつりぽつりといつからかカサブランカに妙な噂が囁かれ始めた。

 人よりも牛よりも象よりも大きい、犬を見た。
 その犬は頭が3つあった。きっと地獄の番犬だ、あのホテルは地獄に通じているに違いない。
 その噂を流した本人はある日、ホテルへ納品に行ったっきり帰ってこなくなった。

 美しい女性を見た。
 この世の者ではないような透き通る肌、窓枠を額縁としてまるで1枚の絵画のような美しい女性がホテルの窓からこちらを見ていた。自分と目が合うと、全てを忘れるほどの女神の微笑みを浮かべたんだ。
 そう話した用聞きをしていた若者はホテルの門前に一晩中立ち、窓を見上げ続け凍え死んだ。恋煩ったその胸にぽっかりと穴を開けて。

 あのホテルは人を食う。
 あのホテルに関わると命を食われる。犬を見たって話てた奴も、得体のしれない奴に恋した奴もホテルに命を食われたんだ。
 そう言い十字架と聖なる油を持ってホテルに荒々しく苦言を申し立てに行った数人は、青い炎に包まれ町の外れで焼け死んでいた。
 そんな事があったからか、町では未だに年寄り達は白亜の城のことを悪魔のホテルと呼び、招待を受けてしまった者はあのホテルに呼ばれる。そうして晩餐に出席させられる。と恐れているらしい。
 そしてオカルトや廃墟好きな人間、肝試しで訪れた若者達の中でごく稀に

「百合の香りがした」

 と言う者がいるそうだ。
 そう述べた者は皆、近いうちに姿をくらませてしまう。まるでホテルから招待を受けたように。


「これで、お話はおしまいです。うぅ……薄気味悪いですよね……」

 前を向きながら語り終わったギャスパルが本を閉じ鞄にしまうと、片手で腕をさすりながら苦々しげに呟いた。

「いやいや、おたくが話したんだろうに。それにしてもやけに凝った本だな」
「本当ならフェアリーテイルサークルのOBがガイド役だったんですけど、家の都合だとかで急遽僕にガイドが……。はぁ……そのOBの父親が趣味で作った本らしいです。読んでて僕も寒くなりましたよ」

 後ろから哀れみを込めてぽんと肩を叩くジョンの反対側から、覗き込むようにしてレディが声をかけてきた。

「一大学のサークルでよく毎年こんなツアーをしているね。しかも遊びたい盛りの君達にはビッグイベントのクリスマスイブに」
「ホームズだって歳は変わりないだろ」
「チッチッチ、君レディに齢の話はノーだよ」

 足を止め呆れたように溜め息を一つ吐くと、ギャスパルは冷え切った足を再び進めた。

「なんでも、先輩の親戚の方がその廃墟の管理人だとかで、OB特権で恒例行事にするとか言って随分前に押し通したらしいです。まったく、怖いのが苦手なのに巻き込まれて散々ですよ!」
「まあまあ、建築物として見れば随分と幻想的で美しいじゃないか。ほら」

 いつの間にか先頭に立っていたレディに手で視線を促され右前方に視線を動かすと、朽ちてもまだ堅牢な門の向こう、人の立ち入ることなく薄汚れた白亜の城があった。

 刹那、チリッ、とギャスパルは胸に焦燥のようなものを感じた。
 なんだろうか……訪れたくないような、ここにいてはいけないような。なにか忘れ物でもしているような焦りに似た不安を感じる。

ここは……なにかに似ているような……。

「どうしたんだい?」

 レディに声をかけられ、はっと我に返ったギャスパルが慌てて後ろに続くツアー客を振り返りぎこちない笑顔を浮かべ、声を張った。

「こちらが先程の話に出てきた在りし日の美しきホテル、カサブランカです。ここからは、事前に配った案内図を見ながら進んでいきますね」

 枯れた蔦が絡みつき大人一人分しか開かない門の隙間を通る。まるでこれからチェックインをするような不思議な心地で正面玄関の前に立ち引き返したいような気持ちを押し殺し、ギャスパルはドアノブへと恐る恐る手を伸ばした。

「ギャスパル、君怖いのかい?先ほどから様子が落ち着かないね」
「え? はは、そうかも……来る前から先輩に変な話を散々聞かされましたし」

 ガイド役だったはずのOBから預かってきた古めかしい鍵を取り出し錆の浮き出た鍵穴に差し込むと、得体のしれない不安を振り払うように頭を振りギャスパルはゆっくりと重く回りにくい鍵を開けた。

ギギギィィィィ___

「お待ちしておりました。ミュレー様」
「え……?」

 手入れをされず建てつきの悪くなった扉が口を開く錆びついた大きな音はギャスパルの呟く声をかき消し、辺りを覆う真っ白な雪に吸収され林までも届かず消えていった。

「ほーん、中は荒れちゃいるが結構綺麗なもんだ。これは廃墟マニアも喜ぶもんさ」

 先陣を切ったジョンの声を皮切りに扉の前で立ち尽くすギャスパルの左右を、ツアー客たちが割ってエントランスホールへと流れこむ。

 所々壁は腐り落ち窓ガラスは無事なものの方が数えるほど、降り続ける雪が風に煽られちらちらと舞い込んでくる。
 白かった壁には蔦が這い雨風や野生の動物にかつての栄華を荒らされてはいるが肝試しスポット特有の落書きはなく、館内は在りし日の気品を漂わせたまま歴史ある古城のような佇まいで一行を迎え入れた。

「ホームズさん今の……聞こえた?」
「なにがだい?退廃的なスノードームみたいで実に良いね」

 面白そうに朽ちた絨毯を歩くホームズを追いかけ不安げに小声でギャスパルは問いかけた。

「そう、ですか……僕の気のせいかも。すみません」

 瞬時に瞳を光らせ好奇心が勢いよく口から出てこようとするホームズから逃げるようにツアー客の最中に合流し、案内図を掲げて回る順番、禁止事項を伝えるために張るギャスパルのから元気な声がホールにこだました。

 余計なこと怖いことは考えぬようキッチン、書斎、ボールルームを周り、階段を登り2階へ辿り着く頃にはギャスパルの不安は気付かぬふりをできないほど頭を占めていた。
 無人のカウンター、僅かに揺れるカーテンの隙間、誰も座っていない埃だらけの椅子、足を乗せている階段の数段上。

 誰かが見ている。

 温室はガラスの破片が多く、天井の役目を果たす残りのガラスもいつ落ちてくるか分からず危険。
 ペントハウスになっている4階は、エレベーターのワイヤーが切れていてそもそも立ち入ることができない。
 先輩から言われたのはこの2つくらいだ。

妙な話は聞くけどゴーストの話は聞いたことないから大丈夫って……こんなのなにも大丈夫じゃない……。
幻想的、退廃的と言えば聞こえは良いけど、到底他のツアー客みたいにはしゃげるわけがない。
毎年抽選になるほど応募者数が集まるのも、好き好んでこんな怖い場所に来るのも僕には理解できない……。

「なんで、こんなところ来たがるんだろう……」

 思わず漏れた心の声に写真を撮っていたジョンが振り返り当然と言わんばかりに、ギャスパルの誰にも宛てていない疑問に答えを返した。

「それはあれだろうな、怖いもの見たさだ。檻の中なら恐怖で逃げ惑うだろうけど、檻の外からなら皆ライオンを見たいさ」
「ライオンとオカルトならライオンの方がまし……いや、どっちも嫌ですよ!」
「違いない!」

 からからと笑い声を上げるとジョンはギャスパルに近づき、ゆっくりと内緒話をするように声を潜めた。

「でもな、きっと皆知りたいんだ。摩訶不思議の裾を掴んでみたい。そしてそれが説明できるものだと、クローゼットにブギーはいないと大声で宣言したいんだ」

 人当たりの良さが鳴りを潜め、日向とは遠いところにいる記者の艷さえも感じるような異様な迫力にギャスパルはリュックの持ち手を握りしめ、今度は目の前の男に宛てて疑問を口にした。

「ジョン、君は何故……ツアーに参加したんだ?」

 ジョンは数歩下がると眼鏡を下げ、じっくりと観察するようにギャスパルを眺めた。

「知ってるかな?チェックインした宿泊客の名簿の話」
「さっき話したやつですか……?」
「あれな、続きがあるのさ」

 人差し指を立て、ギャスパルの言葉を止めると内緒話の続きをするように声を落としジョンは言葉を続けた。

「誰も生き残りなんか、いなかったんだ」
「へ?どういう……」
「ギャスパル・ミュレー」
「僕の、ファミリーネーム、なんで」

 ジョンは名刺が入っていたのとは反対側のポケットから、四つ折りの紙を取り出した。
 開いてギャスパルに読めるように手渡されたそれは、古い名簿をコピーしたもののようだった。

「数年毎に、12月24日のチェックイン名簿の通りの人間が消えてる」

 古いからか印刷ミスなのか、掠れて読みにくい名簿のコピーに走らせていたギャスパルの指が一箇所を指すように止まった。

「え……」
「ギャスパル・ミュレー。あんた、ここにチェックインしてるんだよ、何十年も前に」
「や、やめてください!怖いこと言うの!」

 ギャスパルが己の身を守るように片方の手で自分の腕をぎゅっと握ると、その身を包むようにふわりと__

「百合の匂い……」

 濃密な強い百合の香りが辺りに漂った。
 ギャスパルは弾かれたように渡された紙を投げ捨てると脱兎の如くエントランスへと走り出した。

 静止するホームズの声を背中に受けながら、振り返ることも許されないパニックに、今すぐ逃げなければと言う本能に、ギャスパルの足はもつれながらも階段を飛び下りエントランスを駆け抜け、大きな玄関扉のノブを勢いよく掴んだ。

もう、もうだめだ。そもそもこんなこと引き受けるべきじゃなかった。姉さんとホリデーの約束もしてたのに。
早く帰って、こんな怖いことがあったんだって笑い話にして、先輩に文句言って……それから、それから……。
百合の、匂いが……。

「さあ、シェブラン城のお話をしましょう!」


✦✧✦


 日差しが柔らかく差しこむカフェのテラスでホームズとジョンは穏やかではない雰囲気でコーヒーを注文した。

「私がいながら目の前で行方不明にさせるなんて……」

 そこからは大慌てでツアー客が警察を呼びギャスパルの捜索が行われ、ツアー参加者と建物の管理をしている関係者は三日三晩かけて詳しく話を聞かれた。
 だが結局ギャスパルの足取りは掴めず、警察からは一人で飛び出し麓の町へ辿り着く前に夜から強くなった吹雪で遭難したのだろうと結論が出た。

「こっちはカサブランカの謎を。おたくは行方不明になったご子息の親御さんから依頼でカサブランカを追ってた。まさか、どっちも目の前でみすみす取り逃がすとは思わないさ」
「はぁ……それで、今日私を呼んだのはなんの用事があるのかな」

 ジョンは自分のスマホを取り出すと何かの画面を開いてレディへとテーブルの上を滑らせた。

「SNSのアカウント、ギャスパルのものだね……これは、2日前……?」

 画面には大学での話、好きな本の話などの投稿の一番上に短文の投稿がぽつりと表示されていた。

“たすけて”

「彼は、彼は誰かに監禁を……だが……」
「わかるだろ、名探偵。そんなことあの場の誰にもできっこないって。……あるんだよ、こんなことばっかり追ってると。可能性を潰していって辿り着いた真実が、どうしようもない本物ってさ」

 2人の間に置かれたスマホが新しい投稿を知らせる軽快な電子音を響かせた。

“ホテルカサブランカは素晴らしい場所です。朽ちても尚褪せぬ美しさ、幻想的な白亜の城があなたをお待ちしています!ツアーガイドには物語が得意なストーリーテラーが同行し不可思議なお話でおもてなしをいたします!”


2025,03/01. Happy Birthday! Gaspard.
執筆:アル